「どんなバンド(アーティスト)が好きなの?」と聞かれて、脊髄反射のように答えるバンド皆さんにはありますか?私はフジファブリックと答えます。
フジファブリックとの遅すぎた出会い
私と彼らとの出会いは2009年。スポーツ番組で流れていた、気怠くもなんだか元気になれるイメージソング。その楽曲をつくったのがフジファブリックでした。
フジファブリックがメジャーデビューしたのは、2004年。そこから精力的に活動を広げ、2009年時点では認知度・人気度も上昇していたバンドです。
この5年間、私はフジファブリックのことを何一つ知りませんでした。大学時代軽音楽部だったのにです。彼らのこんなにも魅力的な音楽を知らなかったのには理由がありました。 それは 「メロコアにしか魅力を感じていなかった時期とかぶっていたから」。
愚かすぎる。 軽音楽部にもかかわらず、一時期「キーボードなんていらねーよ」「バンドつったら3ピースだろ?」という偏りまくった感覚を持っていたので、フジファブリックの音楽がセンサーに引っかからなかったのです。
そしてある時期に落ち着きを取り戻し、テレビで聴いた音がズドーンと私の心を射抜き、慌てて〇SUTAYAに駆け込みました。
フジファブリック (Fujifabric) - Sugar!!
当時、テレビでかかっていたのは『Sugar!!』。ロック=メロコア脳だった私にとって、ロックの概念を変える1曲だったことは間違いありません。
天才 志村正彦をつきつける一枚『CHRONICLE』
さて、自らのロックの概念をガツーンといい意味でぶち壊されたフジファブリックの音楽。まずは『Sugar!!』の収録された『CHRONICLE(クロニクル)』を手に取り、それからあっという間にすべてのアルバムを網羅しました。
『CHRONICLE』リリース以前に、3枚のフルアルバムを出していた彼ら。それぞれのアルバムにクセがあり、優劣つけがたい名盤ばかりなのですが、なかでも私は『CHRONICLE』の放つ特異性に魅力を感じずにはいられませんでした。
なぜ、この4枚目のアルバムが特別なのか。それは「志村正彦」の存在の凄さを見せつけられる1枚だからです。
フジファブリックのソングライティングにおいて志村正彦は、最重要人物。2009年までに出した4枚のアルバムのほとんどが志村正彦作詞作曲。彼がいなけりゃこんなにアルバムでてないんじゃないかというくらいの大きな存在です。ただ『CHRONICLE』が他の3枚のアルバムと違うのが、全曲、志村作詞作曲だということです。
もちろん、これまでも彼がほぼメインでソングライティングはおこなっていたわけなんですが、『CHRONICLE』に関しては、メンバーに「全部やらせてくれ」と。
※こんな言い方はしてないと思いますが…。
そして、心強いメンバーと、初の海外レコーディングという充実した環境で出来上がったのが『CHRONICLE』なんです。 志村正彦の今が詰まっていたのが『CHRONICLE』。彼が自分のことをどこかでアピールするとなれば、このアルバムを名刺代わりに差し出せば万事OKくらいの変化にとんだ、彼のあらゆる側面が垣間見えるような名盤が出来上がったというワケなんです。
そしてこのアルバムをリリースした後、レーベル移籍を発表し、新作に向けての意欲もむくむくと大きくなっていた時期に、彼は本当に「全力で走って」天国に行ってしまいました。
その年のカウントダウンライブの本人たち不在のステージは今でも脳裏に焼き付いているほど、それだけショックの大きい出来事でした。
でも、今も3人のメンバーがフジファブリックをどんどん進化させながら活動中なので、私も全力で応援を続けています。
『CHRONICLE』入門編
本当なら、とりあえず「すべて聴いてよ」と言いたいところ。でも、知らないアーティストのCDアルバムを1枚購入することは、一種のギャンブルにも感じられるでしょう。さらに今の世の中、1曲ずつダウンロードして買うという人も多いと思います。だから今回は、独断と偏見で、フジファブリック入門として知らない人に押し付けたい楽曲を紹介します。
バウムクーヘン
まず、イントロから、魅せつけてきますね。憎い!
金澤ダイスケの奏でるシンセの音によって、グイグイっとアルバムの世界観に引き込まれます。それくらいワクワクさせられるのです。多分この時点で1曲買いしたことを後悔すると思います。
誰か僕の心の中を見て※『CHRONICLE』収録 バウムクーヘンより抜粋
徹底的に向き合ったアルバムの一曲目に、こんな歌詞を使ってる曲を1曲目に持ってくる!この演出、憎すぎない?憎すぎて好きすぎる。
チェッチェッチェ うまく行かない※『CHRONICLE』収録 バウムクーヘンより抜粋
って気づいたときには口ずさんでしまうことでしょう。特に仕事うまく行ってない時とか。ムカつく上司に意味わからん案件ぶん投げられたときとか。 臆病な自分を受け止めてみよう、と春先新しい生活が始まるときに聴きたくなること必至です。
Sugar!
私自身も、この楽曲がフジファブリックにドはまりするきっかけでしたし、キャッチ―で疾走感のあるメロディーは、誰にでも愛される楽曲なんじゃないかなと思います。
全力で走れ 全力で走れ※『CHRONICLE』収録 Sugar!!より抜粋
この歌詞に何度救われたことかってくらい、疲れ切ってた時の背中チョイ押しソングとして、重宝しています。(20代後半 女性 OL)
怪しい通販商品に掲載されるコメントのようになってしまいましたが、ほんとに重宝してます。
甘酸っぱい でもしょっぱいでもなんか悪くは…ない!※『CHRONICLE』収録 Sugar!!より抜粋
歌詞を深追いすれば、きっと仕事に疲れたOL向けの楽曲ではないんですが、幾度となく「もうちょっとやってみよ」という気持ちにさせてくれた楽曲であることは間違いありません。よかったら、あなたの背中チョイ押しソングに加えませんか?
Monster
思わせぶりな女と振り回される男の物語とでも言いましょうか。
彼らが爆発的に世間に知られるきっかけになったのが、この後リリースされる『MUSIC』に収録される『夜明けのBEAT』。映画『モテキ』の主題歌に抜擢された楽曲です。でも個人的には、主人公 幸世のモテキ前の恋愛にものすごく当てはまるなーと思って聴いていた曲が『Monster』なんです。
すんなりいかないフェンスは鉄壁 かしまし娘っこ※『CHRONICLE』収録 Monsterより抜粋
速度あげたら止まんない! 瞳孔開いてなおんない!※『CHRONICLE』収録 Monsterより抜粋
好きになったら止まらんっすよね。最近、全然そういうのはないけど(笑)。 早口言葉で畳みかけられるような歌い方は、聴けば聴くほど中毒性を増すと思います。楽曲は先に紹介した2曲と打って変わって、ゴリゴリのロックチューンです。
Anthem
お腹にドンドン響くベース音から始まる、壮大な楽曲。音の広がりに反して、とにかく優しい歌声が心にストンと落ちてきます。
鳴り響け 君の街まで 闇を裂く このアンセムが 轟いた 雷の音気がつけば 僕は一人だ※『CHRONICLE』収録 Anthemより抜粋
だれが、こんな切ない詞を、この壮大なメロディーにのせようと思うでしょうか?これが志村正彦なんだなと、思わずにはいられないそんな楽曲です。 壮大なメロディーとは裏腹に、孤独を淡々と歌い上げることができる人って、なかなかいないと私は思うのです。
All Right
これまた打って変わっての、ゴリゴリゴリゴリのロックチューンです。
これは、もう私自身の後悔としかいいようがないのですが、実はフジファブリックに気づくのが遅かった私は、この『CHRONICLE』のツアーに行けずじまいで。しかも当時は学生。遠征の必要な大型フェスにも、お財布の事情で行けませんでした。だから、聴きたくても聴けていない楽曲の1つが、この『All Right』なんです。
耳で聴いているだけでも、演奏が引くくらい難しそうな本楽曲。実際、メンバーが3人になってからは演奏したっていうのを聞いたことはありませんが、リクエストしていいよって言われたら真っ先にお願いするタイトルです。
とにかく、サイケデリックで、カオス。狂気。こんな曲もできんのかよ!という衝撃。フジファブリックの表現の無限さに恐怖すら感じた楽曲です。
踊るマスコットボーイ 踊るマスコットガール※『CHRONICLE』収録 All Rightより抜粋
でこの歌詞。ありそう、分かりそうで、よく見たら・聴いたら「いや、意味わかんなくね?」っていうのが最高。ありがとう!
Stockholm
たった8行の歌詞に、ストックホルムでのレコーディングのすべてが詰まっている。そう感じざるを得ない楽曲です。
誰かが作った雪だるまを見る 雪が積もる 街で今日も君の事を思う※『CHRONICLE』収録 Stockholmより抜粋
真冬のストックホルムで作られたこの楽曲には、彼が感じた風景も情景もすべてが映し出されています。歌というよりも語り掛けられているような。丁寧さと優しさが印象的な楽曲です。
この曲を最後の曲に持ってきたという演出が憎い~!!!フジファブリック憎い~!!!好きすぎる~!!!
別に弱くてもいいじゃんって気にさせてくれる『CHRONICLE』
独断と偏見による愛だけで、押し付けてまいりましたが、本当は全曲押し付けたいところ我慢したのでお許しください。
正直、好きなアーティストのアルバムでも、いまいちピンと来ない、いわゆる「捨て曲」と言われる楽曲がありますよね?ありませんか?iPodで聴いてたら飛ばす曲ですよ?
でも、この『CHRONICLE』には、独断と偏見と愛によるものかもしれませんがそんな楽曲ありません。それだけ飽きさせない名盤だと私は思ってます。
で、できることならCDとして手元に置いてほしい。ジャケット含めて最高。とにかく、聴いたことない人にはとにかく押し付けて、良さについて1週間くらいかけて語りつくしたい、そんなアルバムです。